SUレター

相続事業承継と国際税務のSUパートナーズ税理士法人

その他Vol.18 交際費等における接待飲食費の5,000円基準とは? ~社内飲食に適用はありません~

交際費等における接待飲食費の5,000円基準とは?

~社内飲食に適用はありません~

その他Vol.18

 

こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の溝口です。

今週は交際費がテーマのSUレターです。

 

飲食費のうち1人当たり5,000円以下の少額なものは交際費から除けることは

多くの方がご存知ではないでしょうか。

では飲食費が1人当たり5,000円以下であれば、

無条件にその金額は交際費から除くことができるのでしょうか。

 

確かに、交際費等の範囲から一定の要件の下で

「1人当たり5,000円以下の飲食費(社内飲食費は除きます)」

除外されています(以下、「5,000円基準」といいます。)。

 

この制度は、得意先等との商談などを活発化するために交際費等から除くとしたもので、得意先等との飲食に限定されています。

 

従業員等のための社内飲食は、

慰安や社内の意思疎通などが目的であることから5,000円基準の適用からは除かれています。

 

また5,000円基準の適用に際しては、参加者の氏名など一定の事項を記載した書類を保存していることが必要とされます。

 

一定の事項を記載した書類

 次の事項を記載した書類の保存が必要であり、記載漏れなどがある場合は交際費となります。

①飲食等の年月日

②参加した得意先等の氏名又は名称及びその関係

③参加した人数

④飲食費の金額、飲食店等の名称及び所在地

⑤その他参考となるべき事項

なお、保存書類の様式には定めがないためメモでも構いませんが、

社内様式を制定するなど記載事項の漏れをなくす必要があります。

 

接待飲食費の範囲に含まれるもの

・自己の従業員等が得意先等を接待して飲食するための「飲食代」

・飲食等のための飲食店に直接支払うテーブルチャージ料やサービス料

・得意先の行事等での弁当等の差入れ

・飲食店での持ち帰り用のお土産代

など

 

接待飲食費の範囲に含まれないもの

・タクシー代などの送迎費

・単なる飲食物の詰め合わせなどで中元・歳暮と変わらないお土産品代

・ゴルフ・観劇・旅行等での飲食

・交際費等に該当しない飲食費用(福利厚生費、会議費、給与など)

など

 

会議費等の関係

従来から交際費に該当しない会議費用(会議に関連して、茶菓子、弁当、

その他類する飲食物を供与するために通常要する費用など)については、

1人当たり5,000円超であっても、その費用が通常要する費用として認められるものであれば、交際費等には該当しません。

 

1人当たりの金額計算

個々の得意先等が飲食店等においてそれぞれどの程度の飲食費等を行ったかにかかわらず、

単純に飲食等に参加した人数で除して計算した金額で判定します。

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おわりに

5,000円基準の適用にあたっては飲食費となる範囲、書類の保存など

注意すべき点が多々あります。

 

仮に人数の水増しや偽名の使用、また一回の飲食代の領収書を複数回に分割したなどの行為があれば、

事実の隠ぺい又は仮装とみなされてしまいます。

不正行為とみなされないためにも、社内ルールの徹底を図ることが重要ではないでしょうか。

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国際税務Vol.18  外国法人の法人税率は内国法人と同じ? ~地方税率が問題に~

 外国法人の法人税率は内国法人と同じ?

地方税率が問題に~

国際税務Vol.18

 

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。

 

外国法人も日本国内の源泉所得があると、法人税を納付しなければなりません。

その場合の、法人税率は日本法人と同様でしょうか?

実は、外国法人の形態により異なります

外国法人は、日本への進出度合で4種類に分けられます。

 

1号PE

支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫、

鉱山・採石場等天然資源を採取する場所。

ただし、資産を購入したり、保管したり、

事業遂行のための補助的活動をしたりする用途のみに使われる場所は含みません。

 

2号PE

建設、据付け、組立て等の建設作業等のための役務の提供で、1年を超えて行うもの。

 

3号PE

非居住者のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、

常にその権限を行使する者や在庫商品を保有しその出入庫管理を代理で行う者、

あるいは注文を受けるための代理人

代理人等が、その事業に係る業務を非居住者に対して独立して行い、かつ、

通常の方法により行う場合の代理人等を除きます。)。

 

4号PE

1号PEから3号PEに該当しないもの

国税庁HPを基に加筆)

 

 

外国法人の日本支店は、

1号PEの典型例ですね。

この法人は、法人税及び地方法人税・住民税・事業税が課税されますので、

日本法人と同様の税率になります。

 

4号PEは、

日本に恒久的施設がない法人になります。

典型例としては、日本の不動産を購入し、賃貸する事業のみ行う法人です。

この外国法人は、法人税と地方法人税のみが課税されます。

住民税と事業税が課税されないため、日本法人より低い法人税率になっています。

 

住民税の国税化の流れ

なお、地方法人税とは、

住民税の一部を国税化されたことにより登場した税です。

住民税は、自治体の税源になりますが、東京に一極集中しており、

その偏在を是正するために設けられた制度です。

 

この住民税の国税化の流れは止まらないようです。

オリンピックイヤーの2020年4月1日以後開始事業年度からは、

地方法人税率が、現行の4.4%から10.3%になります。

かなりの増税のように見えますが、あくまでも法人税率に掛ける税率になりますので、

所得に対する税率としては、1.37%の増加になります。

 

オリンピック後の景気がどうなるのか、心配されている方も多いですが、

税制が不景気を推し進めることがないようにしてもらいたいです。f:id:supt:20171005115616j:plain

相続・事業承継Vol.18 事業承継概論 ~事業承継概論 その①入門 事業承継とは何ぞや~

事業承継概論

~事業承継概論 その①入門 事業承継とは何ぞや~

相続・事業承継Vol.18

 

 

皆様こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の押味です。

 

今回から3回シリーズで

“①事業承継とは何ぞや?”

“②事業承継の課題と対策ってなに?”

“③実際に取り組むにはどうしたらいい?”

という内容で参ります。

 

ご自分や身近で、事業承継に本腰を入れて取り組んでいる方はいらっしゃいますか?

弊社のお客様のなかでも比較的少ないように感じます。

というか、そもそも正直「事業承継ってよくわからない!」と思いませんか?

今回はココを読み解いていきます。

 

なぜよくわからないのか?

『事業承継ガイドライン』なるものが中小企業庁によって策定されました。

このガイドライン、とにかく濃くて素晴らしい内容で、

是非お読みいただきたいと思います!が、長いし難しい。なぜでしょうか?

その理由は、「承継するモノや乗り越えないといけないコトが、複雑多岐に渡るから」

だと、私は思います。

だって、何年も何十年もかけてやってきた事業を、

“事業承継”で数年で引き継ぐことになるのですから、単純ではないのが当然です。

 

でも、一つ一つポイントを確認していけば必ず理解できます!

 

まずは、対象者と3つの類型、を知る

主な主役は“現経営者”と“後継候補者(内外問わず)”です。

現経営者だけが考えるものだと思っていたり、

後継者側としては言い出しにくいというのが実態でしょう。

でも、ポイントは“主役はあくまでも両者である”という点、

つまり、両者が互いに協力することが必要なのです。

 

次に、事業承継といっても、その類型は大きく3つ、後継先によって、

  • 同族内(家族や親戚)に承継
  • 同族ではない役員や従業員に承継
  • M&A(他社に株式を売却)

に分類できます。

つまり、後継者候補がいるかいないか、

同族かどうかによってほとんど方向性は絞られることがポイントといえます。

 

承継するモノはなにか、を知る

さて、事業承継と一口にいっても、承継する具体的な内容はいくつかあります。この整理ができると、更に事業承継が何かというイメージができると思います。

  • 経営の承継

代表取締役といった立場。また、経営者としての能力の承継。

  • 株式(資産)の承継

⇒事業を行うために必要な資産や負債の承継。株式会社の場合には株式ですね。

  • 目に見えない財産の承継

⇒従業員との関係、取引先との関係、など。

あたりでしょうか。

従って、ポイントとしては、“この3つをどうやって承継するか?”と考えればいいということです。

 

 

ステップ、を知る

イメージができたところで、実際に事業承継はどういった手順で行えばいいのかを確認してみましょう。

『事業承継ガイドライン』を参考にすると、

  • 準備の必要性を認識

⇒事業承継には相当準備が必要なんだ!と認識することがまず重要な第一歩!

  • 現況や課題を把握

⇒承継する事業はそもそもどういう状況か、また承継するに際して課題はなにか?を把握する

  • 経営改善をしておく

⇒②で判明した状況や課題から、承継前に「事業の磨き上げ」をしておく

  • 事業承継自体の計画と実行

といったステップです。

 

このうち、今回は①について見てみましょう。②以降のステップは次回以降で見ます。

 

ステップ①準備の必要性、を知る

「準備の必要性を認識する」とは、

「事業承継には相当な準備が必要だ、と認識すること」です。

「時間がかかる」「問題は複雑多岐にわたる」など色々な論点がありますが、

特に「時間がかかる」という認識が最重要です。

事業承継に必要な年数が約10年と言われており、

健康寿命71-75歳から逆算すると61-65歳くらいから着手しないと間に合いません。

しかし、実際はどうでしょうか?61-65歳の経営者の方は、

まだまだ現役バリバリで事業承継なんて考えていない、

または第一線で忙しくてそれどころではない、という状況だと思います。

だからこそ、この「事業承継には相当時間がかかる」という認識がまず最重要だと思うのです。

 

まとめ

準備の必要性を認識することが最重要と書きましたが、その前に、

「日本を支えているのは中小企業。その中小企業を元気に承継する使命がある」

という誇りもあるのです。

 

今回はあくまでも概論で、全体を俯瞰したにすぎません。

次回はステップ②以降のうち、どんな課題があるのか総ざらいしてみましょう。f:id:supt:20171005112655j:plain

その他Vol.17 配偶者控除の改正 ~103万円の壁を超えられるか~

配偶者控除の改正

~103万円の壁を超えられるか~

その他Vol.17

 

こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の木下です。

 

 

今週は配偶者控除がテーマのSUレターとなります。

 

一時期、配偶者控除を廃止して、夫婦控除を新設する話もあった配偶者控除ですが、

平成29年度改正により、新しい配偶者控除が平成30年度からスタートとなります。

 

そもそも配偶者控除とは?何が今までと違うのか?

従来の配偶者控除を確認しつつ、

改正によるメリット・デメリットを確認していきたいと思います。

 

 

 

 

従来の配偶者控除

配偶者控除は、納税者と生計を一にする配偶者の合計所得金額が38万円以下の場合、

納税者の所得から38万円を差し引くことができます。

よく「103万円の壁」と言われていますが、

これは配偶者の給与収入が103万円(他に収入なし)の場合、

※給与所得が38万円(基礎控除額と同額)となり、

配偶者控除によって、納税者の税金が安くなるためです。

(給与収入103万円-給与所得控除(給与に対する概算経費)65万円=所得38万円)

 

従来の配偶者特別控除

実は、配偶者の所得が38万円を超えている場合でも、

76万円未満であれば、38万円~3万円の配偶者特別控除を受けることができます。

給与収入でいうと141万円未満ですので、「141万円の壁」と言われています。

ただし、配偶者控除と違い、納税者の合計所得金額が1,000万円

(給与収入で1,220万円)以下でないと適用することができません。

 

 

配偶者控除等の改正

さて、今回の改正で何が変わったかと言いますと、

38万円の控除を受けることができる配偶者の所得が

38万円(給与収入で103万円)→85万円(給与収入で150万円)まで拡大したことです。

また、配偶者特別控除の上限も

76万円(給与収入で141万円)→123万円(給与収入で201万円)と拡大しております。

 

今回の改正でデメリットも

ただし、メリットだけではありません。

今回の改正により、納税者の合計所得金額が1,000万円以下でないと

配偶者控除を受けることができなくなったのです。

 

また、1,000万円以下でも、金額によっては配偶者控除できる金額が減少しております。

 

以下、控除できる金額についてまとめました。

 

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住民税も同様

住民税についても、配偶者控除配偶者特別控除の規定があります。

こちらも改正があり、所得税と同じく

給与収入201万円以下で適用することができます。

ただし、控除額は最大33万円所得税とは異なります。

 

配偶者控除以外も考慮する必要あり

健康保険や厚生年金の被扶養者については、注意が必要です。

年間収入130万円超(一定の企業の場合、106万円超)の場合、

被扶養者から外れてしまい、保険料を負担する必要があります。

 

配偶者に所得税が課税されるラインも給与収入103万円となりますし、

住民税についても注意が必要です。

そのため、納税者の配偶者控除以外も考慮して、給与収入を考える必要があります。f:id:supt:20171005124522j:plain

 

国際税務Vol.17 相続税の見直しで外国人がやってくる!? ~短期滞在外国人の相続税の見直し~

相続税の見直しで外国人がやってくる!?

~短期滞在外国人の相続税の見直し~

国際税務Vol.17

 

こんにちは。

SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。

 

平成29年税制改正では、

日本に短期滞在する外国人に対しての相続税が見直されました。

外国人に相続税がかかるの?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

そうなんです。

相続税法では、日本に住所を持つ外国人の方が死亡した場合

親族が海外に居住していても、全世界の財産に日本の相続税が課税されるのです。

 

例えば、

日本の子会社に数年の契約で派遣された外国人が、

日本に居住して2年後に亡くなった場合、日本の財産だけでなく、

海外の財産も全て、日本の相続税の対象となります。

そのため、様々な弊害がありました。

 

改正前の様々な弊害の事例

経済産業省資料「平成29年度経済産業関係税制改正について」では、

下記の事例が掲載されています。

 

<欧州出身者>

日本に赴任して2か月後に死亡。全世界財産に日本の相続税が課され、

日本の相続税支払いのため、母国にある自宅の売却を余儀なくされた。

 

<欧州出身者>

日本で死亡すると欧州にある財産に対しても日本の相続税が課税されるので、

日本駐在を中断して帰国した。

 

<米国出身者>

日本への出向契約書の中で、日本で死亡した場合の日本の相続税について

会社と駐在員のどちらが負担するか揉めた

 

<欧州出身者>

日本赴任期間中に亡くなった際に日本の相続税が課されないようにするため、

赴任前に主要財産を親族に贈与しなくてはならない

 

以上のような弊害があったため、平成29年税制改正で、下記のように改正されました。

 

①単身赴任で在留している外国人が死亡した場合、

外国に住む親族が相続する財産の課税対象を国内財産に限定する。

 

②家族帯同で日本に在留する外国人が死亡した場合、

家族が相続する財産の課税対象を国内財産に限定する。

 

③日本に在留する外国人の、外国に在住する親族等が死亡した場合、

当該親族の有する財産の課税対象を国内財産に限定する。

 

この改正により、相続税の面だけは安心して日本に赴任することが可能になります。

 

政府としては、高度外国人材を増やしたいとの意向があるため、

その推進策の1つとしての税制改正ですが、

これを機に外国人が増えていくのでしょうか。f:id:supt:20171005114722j:plain

相続・事業承継Vol.17 小規模宅地の特例の選択承認

小規模宅地の特例の選択承認

相続・事業承継Vol.17

 

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の乾です。

 

 

 

半年ほど前、ある弁護士さんから相談がありました。

「相続人Aと相続人Bがいます。小規模宅地の適用対象地は1つです。

遺言には、相続人Aがこの土地をもらうことが記載されています。

しかし、相続人Bは遺言に納得がいかず、遺言無効の訴訟を起こそうとしています。

申告期限まで2か月なのですが、

小規模宅地の特例の適用をすることは可能でしょうか?

 

さあ皆さんはどう思いますか?

①遺言によって対象地はAさんが相続することになるのだから、適用できる

②遺言が有効か無効かわからない=誰が対象地を相続するかもわからず、

未分割状態になるため、小規模宅地の適用はできない

③判決が出たわけでもないのだから、遺言による財産取得をしたと考えて、Aさんが小規模宅地の特例の適用を受けることができる。あとで判決がでれば修正申告もありえる

 

裁決を読んでみましょう

一つ裁決事例があります。参考に読んでみましょう。

__________________________________

(以下、裁決事例抜粋)

被相続人は遺言を残していました。遺言には、

甲土地相続人Xに相続させる旨の記載がありましたが、

乙土地については記載がありませんでした。

遺言を不服とした相続人Yは、遺言の無効確認訴訟を提起しました。

相続人Xは、他の相続人から小規模宅地の特例適用の同意は難しいとして、

相続人全員の同意書を添付せずに、

甲土地に小規模宅地の特例を適用して相続税の期限内申告を行いました。

 

しかし税務署は、他の相続人の同意がないため、

小規模宅地の特例の適用を否認しました。

そこで、相続人Xは国税不服審判所に審査請求をおこないました。

国税不服審判所は、

租税特別措置法である小規模宅地の特例は、

どの宅地に適用するかにより他の相続人の相続税にも影響を及ぼすものであるため、

各相続人間で利益、不利益が発生するものであるから、

その解釈は厳しく確認されるべきであり、

特例の対象となる土地を取得する相続人の全員から同意書を得られていないため、

甲土地については小規模宅地の特例の適用はできない

と判断しました。

 __________________________________

 

判決でも

また東京地方裁判所の平成28年7月22日判決においても、

未分割の特例対象土地がある場合に、

遺言にある特例対象土地のみを、選択同意を得ずに小規模宅地の特例を適用することは、

他の相続人が現状未分割となっている財産を取得した場合には、

小規模宅地の特例を適用できる可能性があり、

その際に選択の同意を行うことが想定されるため認められない”

としています。

 

今回のケースへのあてはめ

では今回のご相談のケースではどうなるのでしょうか。

今回の場合、遺言に記載のある土地しか小規模宅地等の特例の適用対象地がないことから

原則的には選択の同意を行う必要はないと考えられるため、

相続人Aが小規模宅地の特例を適用して相続税の申告書を提出すべきだと考えます。

 

小規模宅地は本当に難しいものですね。

 

 

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その他Vol.16仮想通貨に関する所得の計算方法等

仮想通貨に関する所得の計算方法等

その他Vol.16

 

こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の溝口です。

今週は仮想通貨がテーマのSUレターです。

 

ビットコインなどの仮想通貨を売却又は使用することにより生じた損益の取扱いはどうなっているのでしょうか。

今回は確定申告の対象となる仮想通貨の損益や計算方法等を確認したいと思います。

 

仮想通貨に関する所得の所得区分

ビットコインをはじめとする仮想通貨を売却または使用することによる損益は、

事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、

原則として、雑所得に区分されます。

事業所得者が、事業用資産としてビットコイン保有し、

決済手段として使用している場合などは、その使用により生じた損益については、

事業に付随して生じた所得と考えられますので、その所得区分は事業所得となります。

 

仮想通貨の売却

保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合、

その売却価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。

 

(例)

3月9日 2,000,000円(手数料含む)で4ビットコインを購入。

5月20日 0.2ビットコイン(手数料含む)を110,000円で売却。

(答)

①売却価額 110,000円

②取得価額 (2,000,000円÷4BTC)×0.2BTC=100,000円

③所得金額 ①-②=10,000円

 

仮想通貨での商品の購入

保有する仮想通貨を商品購入の際の決済に使用した場合、

その使用時点での商品価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。

(例)

3月9日 2,000,000円(手数料含む)で4ビットコインを購入。

9月28日 155,000円の商品購入(税込)に 0.3 ビットコイン(手数料を含む)を支払。

(答)

①商品価額 155,000円

②取得価額 (2,000,000円÷4BTC)×0.3BTC=150,000円

③所得金額 ①-②=5,000円

 

仮想通貨と仮想通貨の交換

保有する仮想通貨を他の仮想通貨を購入する際の決済に使用した場合、

その使用時点での他の仮想通貨の時価(購入価額)と保有する仮想通貨の取得価額

との差額が、所得金額となります。

(例)

3月9日 2,000,000円(手数料含む)で4ビットコインを購入。

11月2日 他の仮想通貨購入(時価600,000円)の決済に1ビットコイン(手数料を含む)を使用。

(答)

①購入価額 600,000円

②取得価額 (2,000,000円÷4BTC)×1BTC=500,000円

③所得金額 ①-②=100,000円

 

仮想通貨の取得価額

同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合の当該仮想通貨の取得価額の算定方法としては、移動平均法を用いるのが相当です。

ただし、継続して適用することを要件に、総平均法を用いても差し支えありません。(例)

3月9日 2,000,000円(手数料含む)で4ビットコインを購入。

5月20日 0.2ビットコイン(手数料含む)を110,000円で売却。

9月28日 155,000円の商品購入(税込)に 0.3 ビットコイン(手数料を含む)を支払。

11月2日 他の仮想通貨購入(時価600,000円)の決済に1ビットコイン(手数料を含む)を使用。

11月30日 1,6000,000円(手数料含む)で2ビットコインを購入。

 

 *移動平均法を用いた場合の1ビットコイン当たりの取得価額

(答)

①3月9日に取得した分の1ビットコイン当たりの取得価額

2,000,000 円÷4BTC=500,000 円/BTC

~3月10日から11月30日までの間に1.5BTCを売却又は使用~

②11月30日の購入直前において保有しているビットコインの簿価

500,000円 ×(4BTC-1.5BTC)=1,250,000 円

③11月30日の購入直後における1ビットコイン当たりの取得価額

(1,250,000円+1,600,000円)÷(2.5BTC+2BTC)=633,334円

※ 取得価額の計算上発生する1円未満の端数は、切り上げして差し支えありません。

 

*総平均法を用いた場合の1ビットコイン当たりの取得価額

(答)(2,000,000円+1,600,000円)÷(4BTC+2BTC)=600,000 円/BTC

     

おわりに

仮想通貨に関する損益は仮想通貨の売却だけでなく、

仮想通貨での商品の購入や別の仮想通貨との交換でも生じます。

 

申告を行うためにはすべての取引をまとめる必要があり、

取引を頻繁に行っている場合は計算が煩雑になります。

また他の仮想通貨との交換等で利益が生じた場合には、

仮想通貨として資産をお持ちでも納税のための現金は手元にありませんので、

事前に納税資金相当の現金を確保しておく必要があるのではないでしょうか。

 

参考:国税庁「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdff:id:supt:20180205173341j:plain

国際税務Vol.16 トランプの米国税制改正

トランプの米国税制改正

 国際税務Vol.16

 

SUパートナーズ税理士法人 阿部です。

トランプ大統領の下で劇的な税制改正が行われようとしています。

世界一高い法人税率の国が、

世界で最も法人税率の低い国になろうとしているのですから。

驚きの一言に尽きます。

 

2017年9月、トランプ大統領の下、政府と議会共和党は、

「崩壊した税法を改正するための統一的枠組み」を公表しました。

その内容は、法人税率を20%以下に引き下げ州税を入れても

24%台の低税率国に変身しようとするものです。

 

米国の法人税といえば、1986年のレーガン税制の抜本改革により、

高い税率(39%)、全世界課税方式、

VAT等の付加価値税はなしという路線が維持されてきました。

それが、ここにきて大方針転換を図ったのです。

 

減税の景気効果によりどの位税収増が実現されるのか不明なところもありますが、

米国経済の活性化のため、

180度方針転換が図られ、これまでの世界一高い法人税率を維持する国家から、

アイルランド並みの低税率国家へと変身してゆくのです。

 

日本でこのような税制の大改革が行われたことがあるのかと翻って見れば、

戦後の敗戦のなか、

外圧により実施されたシャウプ勧告にもとづく税制大改革位ではないでしょうか。

米国大統領の持つ権限・リーダーシップと、

日本の政治体制の違いをまざまざと見る思いがしています。

また、トランプ大統領個人の問題はここではさておき、

失敗を恐れぬ勇気と決断力には驚きを禁じえません。

 

この改正では、これまで米国企業はどこで事業活動をしようと

全世界所得に対して課税するという原則の守護神のような国でしたが、

ケイマン、バミューダ等の軽課税国にある海外子会社に留保された資金が

2015年に累積で2.6兆ドル(訳260兆円)なったことを踏まえ、

海外子会社からの配当金を非課税にして、資金の還流を推進する税制改正を導入し、

ついに全世界所得課税の国という看板を下ろし、領土主義課税国に仲間に入ろうとしています。

 

今から、約30年前国際課税の勉強を始めたころ、

先進国の課税制度は全世界所得課税で、開発途上国は領土主義課税というのが常識だった頃と比べて隔世の感があります。

小国にかかわらず大国であっても、生き残りをかけて、

大胆な税制改正を実施しなければならない競争の激しい経済環境にある

といえるのではないでしょうか。

日本の閉塞感の中、それを吹き飛ばすような、

中小企業を元気にさせるような税制改正を大胆に実施して欲しいものです。

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相続・事業承継Vol.16 医療法人の出資持分

医療法人の出資持分

相続・事業承継Vol.16

 

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の乾です。

時間がたつのは早いもので、もう2月ですね。

税理士業界は繁忙期まっただ中でございます。

12月決算の法人の申告と中旬以降は個人の所得税確定申告

と次から次へと仕事が来る目まぐるしい日々です。

 

この時期はキッチンにお菓子をたーーくさん置きます。

私も従業員さんも残業が多くストレスもたまるのでお菓子をちょこちょこ食べて、

糖分を取って仕事を頑張るという感じです。

太っていたらそういうことか・・・と、そっとしておいてください!

 

さて、それでは今週のSUレターです。

 

非上場株式の話をすることも多いのですが、最近お医者さんのご相談も多いです。

もっともな話です。お医者さんも事業承継の時期に来ているのですね。

 

今月は医療法人の出資についてです。

 

医療法人とは

医療法人は会社法の法人とは異なり、医療法により設立された法人です。

 

社団医療法人には、持分ありと持分なしがありますが、

現在は持分なしの法人しか作ることができません

 

医療法人の相続での相続財産は…

相続、事業承継で問題となるのは持分のある社団医療法人です。

持分ありの社団医療法人の院長(出資者)に相続が発生した場合、

相続人が取得する財産は、持分払戻請求権なのか、出資持分なのか

どちらなのでしょう?

この二つに違いがあるのか?と言うと、違いはあります

 

払戻請求権の評価方法は…

払戻請求権である場合には、

相続時点における1株あたりの純資産価額で評価されるものと考えられます。

そして、持分の払戻額に対して、所得税法に定めるみなし配当があったものとして、

その配当所得に対する所得税源泉徴収がされる場合には、

1株当たりの純資産価額から源泉所得税額を控除した後の金額

によって評価されることになります。

ちょっとややこしいことを書きましたが、

要は相続開始時点で精算できる金額というイメージです。

 

出資持分の評価方法は…

一方、出資持分となれば、取引相場のない株式に準じて計算することになります。

詳しくは2ヶ月前のブログをご覧ください。http://supt.hatenablog.com/entry/2017/12/05/083000


 

なお、

払戻請求権=純資産価額評価額>出資持分=取引相場のない株式に準じた評価額

となることが多いといえます。

 

 

 原則は持分払戻請求権となるが…

では医療法人は、どちらなのかというと・・・

原則的には、死亡により退社した場合、モデル定款では、死亡時点で

「社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる」

となっており、相続人は持分払戻請求権を取得したことになる。

 

一定の場合には出資持分となる!

 しかし

相続後に相続人が定款に基づく社員総会において社員と承認され、

持分払戻請求権を行使せず名義変更をした場合には、

出資持分を相続したものと解されます。

つまり、取引相場の無い株式に準じて計算されます。

 

 

 

出資持分の場合の評価の特殊性について

 ただし、医療法人については少し計算方法に注意が必要です。

医療法人は会社法の株式会社などと異なり、

医療法の規定によって剰余金の配当が禁止されています

 

ちなみに配当に類似する下記のような行為を社員(出資者)と行うことは

適切ではないとされています。

1 近隣の相場とかけ離れた賃料での不動産賃貸契約

2 病院等の収入に応じた定率的な賃料契約

3 役員への不当な利益の供与

4 個人又は関係する法人への寄付

 

そのため類似業種比準価額の計算において、配当を考慮しない算式となります。

(1) 180≪類似業種比準価額≫に定める算式

      f:id:supt:20170928174503p:plain
 ただし、上記算式中の「0.7」は、178≪取引相場のない株式の評価上の区分≫に定める中会社に相当する医療法人に対する出資を評価する場合には「0.6」、同項に定める小会社に相当する医療法人に対する出資を評価する場合には「0.5」とする。

 

上記の算式の通り、「利益金額(CやⒸ)」と「純資産価額(DやⒹ)」の2つによって株価が決まります

平成29年税制改正により「利益金額」と「純資産価額」の影響度合いは、

1対1となったため、利益の圧縮による株価対策は、以前よりは効かなくなりました

 

その他留意点としては、取引相場のない株式の評価方法のような配当還元方式はありません

 

この出資持分の評価=評価額を低く抑えられる可能性のある評価

となる根拠資料として、

・医療法人の定款

・相続人が入社を承認された社員総会の議事録

・遺産分割協議書(遺言書)

を、きちんと用意しておかなければ、あとから税務署に

「これは出資持分ではなく持分払戻請求権だ!純資産価額評価だ!」

との指摘を受けて、相続財産が増える可能性もありますよね。

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その他Vol.15 減価償却費と特例2 ~高額資産の取り扱い~

減価償却費と特例2

~高額資産の取り扱い~

その他Vol.15

 

こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の木下です。

今週も、減価償却がテーマのSUレターです。

 

前回の減価償却費と特例では、少額資産の特別な償却方法をご紹介致しました。

 

supt.hatenablog.com

 

 

今回は、高額資産についての様々な特別償却税額控除について、

対象設備や要件を簡単にご紹介していきたいと思います。

 

特別償却と税額控除

まずは、特別償却(即時償却)と税額控除の違いについて、

1000万円の建物を取得して、30%の特別償却と7%の税額控除を選択できる場合を例に見ていきましょう。

 

特別償却では、

取得した1年目に通常の減価償却費の他

1000万円×30%=300万円の減価償却を計上することができます。

そのため税率を34%とすると、300万円×34%=102万円税金が安くなります。

 

これに対して、税額控除では、取得した1年目に通常の減価償却費の他

1000万円×7%=70万円税金を安くすることができます。

 

選択適用の有利不利

上記の例ですと、特別償却の方が1年目の税金が安くなり、

有利に見えますが、そうとは限りません。

特別償却はあくまで、将来の減価償却費を先取りしているだけです。

そのため、当期に減価償却費(費用)を多く計上している分、

将来の減価償却費(費用)は少なくなる→将来の税金が多くなることになります。

これを課税の繰延べといいます。

 

これに対して、税額控除では、本来計上できる減価償却費とは別枠で、

税額を控除することができます。

そのため、将来の税金も含めて考えると、

基本的に特別償却より税額控除の方が有利になります。

 

以上を踏まえて、様々な特例を見ていきたいと思います。

 

中小企業経営強化税制

青色申告の中小企業者等が一定の要件を満たし、経営強化のために設備を取得し、

指定事業の用に供した場合、

取得価額を即時償却or取得価額の※10%税額控除を受けることができます。

※資本金3,000万円以下の場合。3,000万円を超えると7%税額控除。

 

○対象設備や要件は、生産性向上設備(A類型)と収益力強化設備(B類型)で異なります。

 

生産性向上設備(A類型)

○対象設備は、

・機械装置で1台160万円以上

・測定工具及び検査工具で1台30万円以上

・器具備品(一定の電子計算機・医療機器を除く)で1台30万円以上

・建物付属設備(医療保険業の一定のものを除く)で一つ60万円以上

・ソフトウェア(情報収集機能、分析・指示機能を有するもの。

ただし、一定のものを除く)で一つ70万円以上

 

○要件としては、

・一定期間内のモデルであり、生産性が旧モデル比年平均1%向上する設備である

証明書を工業会等から取得すること

・証明を受けた設備による経営力向上計画を主務大臣に申請し、

認定を受ける必要があります。

 

 

収益力強化設備(B類型)

○対象設備は、

・機械装置で1台160万円以上

・工具で1台30万円以上

・器具備品(A類型と同じ)で1台30万円以上

・建物付属設備(A類型と同じ)で一つ60万円以上

・ソフトウェア(一定のものを除く)で一つ70万円以上

 

○要件としては、

・年平均の投資利益率が5%以上と見込まれる設備であることについて、

経済産業局から確認書を取得すること。

・その設備による経営力向上計画を主務大臣に申請し、認定を受ける必要があります。

 

パンフレット

http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2017/170407zeiseikinyu.pdf

 

 

商業・サービス業活性化税制

青色申告の中小企業者等が一定の要件を満たし、経営改善設備を取得し、

指定事業の用に供した場合、

取得価額の30%特別償却or取得価額の※7%税額控除を受けることができます。

 ※資本金3000万円以下の場合。3000万円を超えると税額控除はできない。

 

○対象設備は、

・器具備品(ショーケース、看板、レジスターなど)1台30万円以上のもの。

・建物付属設備(空調施設、昇降機設備、電気設備、店舗内装など)

1台60万円以上のものとなります。

 

○要件としては、経営改善指導等を行う機関から経営改善指導等を受けた旨

を明らかにする書類の交付を受けて、その書類に基づき、

上記の対象設備を取得する必要があります。

なお、経営改善指導等を行う機関は商工会議所や認定経営革新等支援機関などが該当します。

 

パンフレット

http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2015/150401zeisei1.pdf

 

中小企業投資促進税制 

青色申告の中小企業者等が一定の設備を取得して、指定事業の用に供した場合、

取得価額の30%特別償却or取得価額の※7%税額控除を受けることができます。

 

○対象設備は、

・機械装置で1台160万円以上のもの。

・測定工具及び検査工具で1台120万円以上のもの

(1台30万円以上で複数の合計が120万円以上でも可能)

・ソフトウェア(一定のものを除く。)で一つ70万円以上のもの(複数の合計が70万円以上でも可能。)

貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)や内航船舶(取得価格の75%が対象)

 

特に計画の認定を受ける必要はないので、他の規定に比べると、かなり適用を受けやすくなっております。

 

パンフレット

http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2014/140401uwanose.pdf

 

規定のまとめ

規定によって、対象となる設備は異なりますので、下記図を参考頂ければ幸いです。

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その他の規定

今回ご紹介した規定以外にも、

地域固有の強みを活かした設備投資に対する地域未来投資促進税制

エネルギー環境負荷低減を推進する設備投資に対する環境関連投資促進税制など、

様々ありますので、高額資産の取得を検討されておりましたら、

特例の適用ができないか考えてみてはいかがでしょうか。f:id:supt:20171005122750j:plain