SUレター

相続事業承継と国際税務のSUパートナーズ税理士法人

その他Vol.11 事業的規模で変わる不動産所得 ~5棟10室と実質基準~

事業的規模で変わる不動産所得

その他Vol.11

~5棟10室と実質基準~

 

 こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の木下です。

 最近、マイナス金利などの影響もあってか、

個人で不動産賃貸を行う方が増えてきているように感じております。

ただ、不動産の賃貸といっても、副業でマンションの一室を賃貸している方や、

本業でビルを貸し付けている方など、

弊社のお客様だけでも様々な規模の方がおります。

 

実は、その不動産賃貸の規模が事業的規模か、

それ以外かで税金の計算が変わってきます

事業的規模とは何か?事業的規模の特典とは何か?

今週はそんな賃貸規模と不動産所得がテーマのSUレターとなります。

 

事業的規模とは?

一般的には、アパートやマンションなら10室、一戸建てなら5棟、

賃貸していると事業的規模となります。

また、1棟は2室と同等とみなしますので、

アパート8室・一戸建て1棟の賃貸でも、事業的規模となります。

 

実質基準による判定

上記の形式的な「5棟10室基準」に該当しない場合でも、

実質的に事業かどうかの判断をすることができます。

裁決事例によると、

 営利性や有償性

 継続性・反復性

 人的・物的設備の有無

 精神的・肉体的労力の程度

などなど様々な点を考慮して判断を行います。

 

賃貸収入が1,500万円以上ある場合でも、

貸付先が一社のみ

貸付面積が小さい

賃借人が修繕費を負担すること

などを総合的に判断して、

事業的規模ではないとされた裁決もあります。

 

次に、事業的規模になった場合の特典について、主なものを見ていきましょう。

特典①65万円の青色申告特別控除

青色申告では、通常10万円を賃貸収入から経費として控除することができます。

さらに、

事業的規模で複式簿記への記帳や貸借対照表・損益計算書を備え付けていると、

65万円が控除額となります。

 

特典②事業専従者控除

青色申告で事業的規模の不動産賃貸業に専従する生計一親族に対する給与は、

経費に算入することができます。(税務署に届け出た金額が限度となります。)

 

白色申告の場合も同様です。

ただし、経費になる金額は、支払額に関係なく、

配偶者が86万円、それ以外は一人50万円となります。

(それぞれ、この経費計上前の不動産所得を専従者数+1で割った金額が限度です。)

 

特典③貸倒損失の経費計上

未収賃料が貸倒れた際、事業的規模ですと、貸倒れた金額がその年の経費となります。

 

事業的規模以外ですと、

その年の経費ではなく、その未収賃料が発生した年に遡って収入を取り消す

こととなります。

例えば、平成26年に不動産収入に計上された100万円の未収賃料が、

平成29年に貸倒れた場合です。

事業的規模でなければ、平成29年の経費ではなく、

平成26年に100万円の収入がなかったものとなります。

つまり、平成26年は収入100万円分多く申告したので、

税務署に納めすぎた税金を返すよう、更正の請求をする必要があります。

 

特典④資産損失の経費計上

賃貸収入の基となった建物の取壊し等による、

損失の金額(取壊し直前の帳簿価額など)については、

事業的規模ですと、全額経費となります。

 

事業的規模以外ですと、

その損失の金額以外の不動産所得が限度となります。

例えば、

賃料収入が100万円

損失の金額50万円

その他の経費が70万円の場合

損失の金額のうち、30万円(100万円-70万円=30万円<50万円)

しか経費に計上できません。

 

この他にも、賃貸収入の計上基準、利子税の経費算入などがあります

 

事業的規模の注意点

事業的規模にすることにより事業税が発生する可能性があります。

そのため、賃貸規模を大きくする際には、上記のメリット以外にも、

事業税の発生や出費、負担の増大などデメリットも考えましょう。

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国際税務Vol.11 もう税理士は必要ない?~エストニアの電子政府から見える未来~

もう税理士は必要ない?

国際税務Vol.11

エストニア電子政府から見える未来~  

こんにちは。少しずつ秋の気配が感じられるようになりました。食欲もレジャーもこれからが本番でワクワクしています!

 

 

ヨーロッパの人口わずか130万人の小国エストニアは、

刷新的な制度で世界中の注目を集めています。

その制度の影響で現地の税理士の仕事がどんどん減少しているそうで・・・

 

さて今週は税理士業界の危機?がテーマのSUレターです。

 

エストニアの基本情報

北欧の国エストニアフィンランドから約90km南に位置し、人口は130万人、

面積は約45,000キロ平方メートルという小国です。

「ヨーロッパの絶景~」の類の本にまるでおとぎの国のような景色がよく載っており、

赤い屋根が連なる写真を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

 

電子政府のオモテとウラ

この小さな国が、「e-Government(電子政府)」に取り組み、

ITの分野で世界の最先端を突き進んでいます。

この制度のもと国民はIDカードを配布され、

そのカード1枚で身分証明書、運転免許証、健康保険証等を兼ねるほか、

銀行口座へのログイン、選挙、納税、などの様々な手続きを行うことができます。

例えば、選挙の際国民はIDカードでログインし、

インターネットから投票することができます。

海外にいる人もネット環境があれば投票することができるため、

事前の不在者投票などに行く必要もありません。

 

法人登記もインターネット上で簡単に行うことができます。

 

また電子カルテ制度もあり、異なる病院で受診したものも全て統合して管理され、

医師はこれを閲覧して治療にあたることが可能です。

 

この便利なシステムは、裏を返せば全ての国民の情報を国家が握っていることになります。

預金残高も把握されており、課税額の計算もほぼ自動的に計算されるようです。

 

電子政府における税務

税制も簡素化された(所得税は法人、個人とも一律20%など)ため、

国民はe-taxシステムにおいて自分の納税額を確認し、

承認するだけで確定申告が完了するので、

税理士にわざわざ依頼する必要もないわけです。

 

もう税理士はいらない・・・?

 

実際、個人に対する節税のアドバイスや申告業務はどんどん減っており、

かろうじて法人相手の業務は残っているものの、

付加価値のあるサービスを行うことが難しくなっているとのことです。

 

日本では?

日本も同様のシステムが導入され、電子政府による個人の管理が徹底されたとしたら、

税理士が必要ない時代になるのでしょうか。

エストニアの現状を知るにつれ、日本の税理士業務の先行きが不安になります。

 

ただ、日本の税制は世界的に見てもかなり複雑で難解な部類に入るものなので、

この税制自体がもっと簡素化されない限り、

急激に税理士の需要が減るということはないのではないかとは思っています。

また人口130万人の国だからこそできた面も多くあり、

そもそも人口が全く違う日本において簡単に実現というわけにはいかないでしょう。

 

しかしながら、今後は海外の進んだ制度をどんどん取り入れて業務を効率化することも必要で、

時代の変化とともに税理士を含む専門職の立ち位置も変わってくることは間違いなさそうです。

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相続・事業承継Vol.11 株式の機能② ~全部取得条項付株式を活用~

株式の機能②

相続・事業承継Vol.11~全部取得条項付株式を活用~

 

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の押味です。

 

相続税で争点となるのは、財産の分割や納税資金といわれており、

実際その通りだと実感します。

そして、相続税の対象となる方の中には、

事業を行っている方(株式をお持ちの方)も多いのですが、

この株式もこの争点に影響を与えています。

 

今週は、この株式の承継について、

その中でも種類株式(全部取得条項付株式)について、

その活用の仕方を見ていきます。

 

事業承継、株式承継に活用するとは

全部取得条項付株式を事業承継に活用するというのは、

“株主を整理する”ということだといえます。

特に業歴が長い会社ですと、取引先や創業時の仲間(やその親族)、

兄弟姉妹など株主が多く存在することも多々あります。

このように、これといった必要性が無いのに株主が多く存在していると、

そのうち収集がつかなくなってしまいます。

 

また、相続の場面以外にも、会社が重要な決断をするときに反対株主が存在する可能性もあります。

これでは中小企業の強みであるスピーディーな動きも取れません。

 

全部取得条項付き株式とは?導入法は?

 まずはざっくりと内容を見てみましょう。

・全部取得条項付き株式とは、

株主総会の特別決議により、その種類株式を会社が全部取得することができる株式」

…つまり、株主総会で「買おう!」となれば会社が買い取ることができる!

 

・なお、特別決議とは、

「議決権を持った株主のうち過半数の出席があり、出席したうちの2/3以上の多数による決議」です。

…つまり、少なくとも2/3以上が味方であれば導入も買取も可能!

 

・そして、その導入法は(現在は普通株式のみの会社だと仮定して)、

①種類株式を発行できる会社に定款を変更(やはり株主総会特別決議で)

②既発行の普通株式全部に全部取得条項を付ける

→これで完了!

 

 

活用法は?

上記の通りに全部取得条項付株式を導入した後で、

①全株買取の決議をする

買取の対価として新株を交付するが、排除したい少数株主には交換比率を調整して、端株=株式ではなく金銭を交付するようにする

 

これで少数株主を排除することになります。

※少数株主を保護するための措置もちゃんとあります。

 

いかがでしょうか?わかりにくいので、例を考えましょう。

 

簡単な例

株主構成をAさん15株&Bさん15株 vs Cさん10株と仮定します。

特別決議では、Aさん15株&Bさん15株の併せて30株/40株(2/3以上)となり、

導入や買取まで行えますね。

 

また、「旧株式15株につき新株式1株交付します」とすると、

Cさんには株式を交付できませんので、代わりにお金を渡すこととなります。

 

イメージつきましたでしょうか?

 

最後に

 相続税で争点となる“財産の分割”と“納税資金”に影響を与える大きなものには2つあると思います。

不動産と株式(非上場株式)です。

「分割のしやすさ」「換金のしやすさ」から考えるとよくわかります。

 

会社は株主のものですから、特に非上場の株式については、

その所有者である株主が多く存在することになることは望ましくない場面が少なくありません。

株主が多い

 =利害関係者が多い

  =利害関係が対立してしまうことも多い、

ということです。

 

また、お亡くなりになる方が生涯をかけて育ててきた会社というのは、

その事業自体もさることながら、家族の歴史、創業の想い、

従業員、従業員の家族など、

財務諸表やある一つの視点からでは見えない大切なモノが多くあり、

株式が分散し、会社運営に支障をきたすようなことになるのは望ましくないといえます。

 

「自分の子供たちは仲がいいから何があっても大丈夫」と思う方も多いでしょうが、

「親族」という範囲で見ると、血のつながりのない“子供の配偶者”がいることを忘れてはなりません。

かなしいかな、ご自分がいなくなった後は、

ご自分の思っているようなことにならないことも多いです。

 

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その他Vol.10 欠損填補と均等割~均等割を安く抑える~

欠損填補と均等割

その他トピックスVol.10

~均等割を安く抑える~

 

こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の木下です。

資本金の大きさにより、税率や税額控除額が変わるなど、

資本金と税負担には密接な関係があります。

資本金を一億円以下にし、税制上の優遇措置を受けようとして批判された大企業もありましたね。

今週はそんな資本金と税負担のうち、

住民税の均等割がテーマのSUレターとなります。

 平成27年度の改正により、法人住民税の均等割の基準となる金額に変更がありました。

赤字が続いている会社では、無償減資に係る欠損填補により、

均等割が安くなるかもしれません。

 

そもそも均等割って?

法人のもうけに関わらず、事務所や事業所(以下、事務所等)がある各都道府県・市町村に支払う税金で、従業員の数法人住民税の資本金等の額により納付額が変わります。

 

例えば、東京都(特別区内で従業員50人以下)ですと

法人住民税の資本金等の額1千万円以下で年7万円、

法人住民税の資本金等の額1千万円超~1億円以下で年14万円の納付額となります。

 

無償減資に係る欠損填補って?

会社の資本金等を減少させて、

欠損金(赤字の積み重ね部分、その他利益剰余金のマイナス)に填補することです。

 

減資すると均等割が安くなる?

以前までは、法人住民税の資本金等の額は、

法人税法上の資本金等の額(資本金や資本準備金などに調整を加えたもので、

無償増減資を行っても金額が変わりません。)でした

 

しかし、平成27年度改正により、

法人税法上の資本金等の額に無償増減資を加減算したものが、

法人住民税の資本金等の額になりました。

そのため、欠損てん補により資本金が減少した場合に、

法人住民税の資本金等の額が減少するので、

均等割の納付額を減少させることができるのです。

※増資した場合には、資本金等の額が増加します。

また、過去に行われた増減資も対象となります。

 

欠損てん補の手続き

資本金等の額を減少させるため、株主総会特別決議が必要となります。

なお、無償減資による欠損てん補の場合、定時株主総会の普通決議でも可能です。

 

また、資本金を減少させる場合には、債権者保護手続きとして、

公告や催告を行う必要があります。

 

登記届け出を忘れずに

資本金の額が減少した場合には、登記を行う必要があります。

また、税務署等にも異動届出書を提出する必要もあります。

 

確定申告では

確定申告の際には、上記の株主総会議事録や、

債権者に対する異議申立の公告官報の抜粋)、

株主資本等変動計算書が必要となります。

 

最後に

登記や公告・催告などの手続きには、費用が発生しますので

均等割を抑えるために無償減資を行う際には、費用対効果を確認しましょう。

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国際税務Vol.10 国際的租税網CRSで丸裸! ~公平な社会?監視社会?~

国際的租税網CRSで丸裸!

国際税務Vol.10

~公平な社会?監視社会?~

 

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。

 

皆さん、CRSという用語をご存知でしょうか。CIAではございません。

税理士以外の方で知っている方は、ドキッとしている方もいるようです。

 

CRSは、Common Reporting Standardの略で、日本語では、「共通報告基準」と言います。

経済協力開発機構OECD)では、経済活動全般を意見交換していますが、

その中に税の分野もあります。

今、世界では国家をまたがる脱税・租税回避が問題となっており、

OECDを中心に世界的に統一ルールを策定しようと動いています。

 

その中で、一つの成果として出たのが、CRS(共通報告基準)になります。

 

CRSとは・・・

前置きが長くなってしまいましたね。次に中身を見てみましょう。

 

国税庁HPには、

「各国の税務当局は、自国に所在する金融機関等から非居住者が保有する

金融口座情報の報告を受け、租税条約等の情報交換規定に基づき、

その非居住者の居住地国の税務当局に対しその情報を提供します。」

と記載があります。

 

例えば、日本居住者Aさんが、シンガポールに銀行口座を持っていたとしましょう。

その場合、シンガポールの銀行はAさんの名前・住所・納税者番号・

口座残高・利子や配当などの年間受取金額を、シンガポールの税務署に報告します。

そして、シンガポールの税務署は、その報告を受けた内容を、日本の税務当局に自動的に報告します。

この一連の流れが、CRSによる金融口座情報の自動的交換という制度になります。

 

CRS導入でどうなる?

 CRS導入により、日本の税務当局は、日本居住者が海外に持つ銀行口座や証券口座を自動的に入手することができます。

その情報を、提出済みの確定申告書と照合し、海外の利子や配当の記載が無ければ、

すぐに税務調査という流れになるでしょう。

 

税務当局にとっては、増差バブル!

納税者にとっては、納税地獄!

となるかもしれませんね。

 

ITが発達し、経済的に国境の壁が低くなってきたことで、

国際的脱税や租税回避が簡単に複雑に行われて来ました。

しかし、ついに、国同士が連携して、そのITを使って、

全世界の情報を集めようとしています。

 

国境なき世界連邦への一歩になるのか、グローバルな監視社会になるのか、

人類はどの方向へ向かっているのでしょう。

 

世界のリーダーあの国は入っていない!

CRSは、2017年6月時点で100か国・地域が導入を予定しています。

その中には、イギリス、イタリア、インド、ドイツ、フランス、オーストラリア、

中国など、大国が名を連ねています。

もちろん、ケイマン、BVI、パナマシンガポール、香港など

の有名なタックスヘイブン地域も含まれています

タックスヘイブン地域が入っていなければ、何も有効に機能しませんからね。

ただ、世界のリーダーと言われる、アメリカが入っていません

何故でしょうか。アメリカの見解としては、既に国内の法律で同様の制度があるため、

必要ないとしています。

その制度は、FATCA(通称ファトカ)と呼ばれ、

アメリカ人及び永住権保持者が国外に銀行口座がある場合、

その銀行は、毎年アメリカに報告しなければならないという制度です。

つまり、アメリカの徴税のための制度です。

☆ CRSは、お互いの国のための徴税システム。

☆ FATCAは、アメリカだけの徴税システム。

 

なぜ、FATCAを導入しているからCRSは必要ない、というのか理屈が分かりません。

さすが、アメリカ第一主義ですね!

ちなみに、トランプさんが決めたと思いきや、オバマさんの時代に決めていました。

アメリカ第一主義は、アメリカのアイデンティティなのでしょうか。。

 

これ以上書くと、アメリカに入国できなくなる?ので筆を置きたいと思います。

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相続・事業承継Vol.10 株式の機能①~事業承継における問題~

株式の機能①

相続・事業承継Vol.10~事業承継における問題~

 

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の押味です。

 

暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

業種によって忙しい時期は異なると思いますが、

会計事務所にとって夏は比較的落ち着く時期といえます。

ただ、8月の前半には税理士試験がありますので、

「勝負の月」というイメージもあるのです。

 

さて今週からは “事業承継における株式の機能”をテーマに、まず

“そもそも株主の権利には何があるか”

“事業承継における問題”

という2点をご一緒にみていきたいと思います。

 

突然ですが、皆様の関わりのある会社で、次のような株主はいらっしゃいませんか?

もしいらっしゃる場合、後々大変なことになってしまうかもしれません。

  ・現経営者、後継者以外の多数の株主

  ・所在がわからない、連絡をとっていない株主

  ・「名義株主らしい」という株主

  ・現経営者、後継者に対して否定的な株主

  ・親族関係がない、遠い親族関係の株主

  ・後継者の兄弟姉妹

                    etc…

 

そもそも株主の権利には何があるか

株主は、

・配当などをもらう権利

・議決権

の2つの権利を持っているといえます。

事業承継ではこのうちの、議決権が問題となりがちです。

当然、議決権とは、

株主総会での決議を左右することができる権利≒会社の運営に関する重要な決定権」

で、基本的には単純な多数決で優劣が決まります。

 

また、この決議には、「普通決議」とちょっと厳格な「特別決議」があります。(特殊な「特殊決議」などは無視します)

この2つの決議は、「決議する内容」「会が成立するための議決権数」「可決するための議決件数」に違いがあります。

種類

決議する内容

成立するための数

可決するための数

普通決議

・役員の選任解任

・役員の報酬

など

過半数の出席

出席数のうち過半数

特別決議

・定款の変更

・組織再編

など

過半数の出席

出席数のうち2/3以上

※理解のために、極端に簡単に、かつ、焦点を絞って説明しています。

会社によっては事情が異なることがありますので、ご注意ください。※

 

 

事業承継における問題

それでは、議決権が問題となってしまう事例として、

”仲の良かった子供たち3人が、

事業承継をきっかけに不本意ながら仲たがいしてしまい、

結果的に事業に失敗してしまう物語”を、

議決権割合に注目しながら見てみましょう。

<事例>

【第一話】

父Aは、B商事㈱を設立し40年経営してきました。

その後3人の子供(長女C、長男D、次男E)に、数年かけて15%ずつ株式を贈与していました。

 

【第二話】

その後、父Aは事業を長男Dに継いでもらおうと思い、長男Dを副社長にしました。

しかし、Aは財産=株式を、平等に子供たちに残したいと考えており、

亡くなるまで保有割合はそのままでした。

長男Dを副社長にした後、父Aが急逝します。

長男Dが事業を承継することは家族全員が同意していましたが、

遺産分割協議では、株式については「父Aは平等に残したいと言っていた」

という意見があり、子供たちで1/3ずつ相続しました。

 

【第三話】

そして、父Aの死は急だったこともあり、

その後しばらく会社の業績は落ち込みましたが、

任された長男Dは死に物狂いで働き、なんとか持ちこたえていきました。

しかし、その間、従業員の気持ちを顧みることもできない場面もしばしば。

従業員は、常務である次男E(実質的に社内の切り盛りは常務の仕事だった)や、

経理部長として働いていた長女Cに不満を漏らすことも。

長女Cは、年上にもかかわらず長男Dや次男Eの陰にいて、

いままであまり日の当たってこなかった自分が今度は頼られる立場となったことで

使命感を持ちます。

Cは法律事務所に勤務する夫になんとなく相談したところ、

「CとEさんで議決権の過半数持っているなら解任できるよ」

と告げられます。

自宅などめぼしい財産を相続した長男Dに対して、

他人には漏らすことのできない不満、

自分でも気づかなかった不満があった次男Eは、長女Cに協力することに…。

 

<議決権>

上記の事例における議決権は、次のように変化しています。

                         【第一話】                                 【第二話】

父A:100%     →       父A…55%         

                   長女C…15%   →  長女C…33.3%

              長男D…15%      長男D…33.3%

              次男E…15%            次男E…33.3%

【第一話】の時点では「過半数を父Aが持っている」状態ですので、

父Aは基本的には思うがまま事業を行えるといえます。しかし、

【第二話】の時点でCDEが1/3ずつ持っており、

【第三話】の相続の結果、「過半数(66.6%)を長女Cと次男Eが持っている」状態に。そのため、この二人の思うままになります。

具体的には、「長男Dの解任」をすることもできてしまうのです…。

 

この事例では、本当に悪い人は一人もいませんが、

残念な結果になってしまったと言わざるを得ません。

 

 

事業承継と株式承継の関係

一口に「事業承継」といっても、一歩踏み込んで、

「事業」とはなにか?なにを「承継」するの?と考えてみると、

なかなか掴み難いものです。

 

なぜかというと、どの会社でも事業承継に当たっては、

数多くの乗り越えなければならない課題があり、

非常に長い時間を要する

からです。

そして、このSUレターで見てきた通り、数多くの課題の中でも、

ほぼ100%の会社が直面する課題が“株式の承継”なのです。

 

例えば冒頭のような株主がいる場合、事例のように

・株式が分散する

・後継者が経営しにくい

という、まさに「事業承継の弊害」となってしまうのです。

 

次回のSUレター 事承承継に役立つ?「種類株式」導入編①!

でも、実は、対応策はたくさんあります。

次回は、そんな対応策の中でも、「株式の機能」に焦点を絞っていきます。

ずばり、「種類株式」を活用した対応策のご紹介です。

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その他Vol.9 保険商品への驚き、再認識 (3)

保険商品への驚き、再認識  (3)

その他Vol.9

 

今回も、引き続き税理士の阿部が担当します。

 

金融商品のとある側面について

銀行の税務に所属していた頃、デリバティブをはじめとする金融商品の税務の取り扱いを検討するに際していつも感じていたことですが、

デリバティブ等の金融商品は、詮じ詰めればキャッシュフローの集まりにすぎない”ということです。

それを、典型的な様々な契約に当てはめたり、

様々な条件付けの中で独自の命名をしているのに過ぎないのです。

 

例えば、「預金取引」の命名や課税関係は

例えば、預金取引では、金融機関サイドに立つと、

最初に、預金を預かるキャッシュインフローがあり、これを「預金」と命名します。

次に、預金利子や満期金の払い出しをする際には「利子や預金の払い戻し」と命名します。

また、この「利子」と命名された部分は利子所得と認識され課税対象となるのです。

このようにキャシュアウトフローに名前をつけ、

様々な理由を付けて課税の有無や課税方法を国ごとに取り決めを行っているのです。

預金の利子だけでも、源泉課税だけで完了する場合もある一方、

海外の銀行に預けた利子は、総合課税とされることもあります。

また、預金の利子に課税しない国もあります。

 

キャッシュフロー集まりでしかないが…
このように、本来はキャッシュフローだけでしかないのに、

様々な色付けを行っているのに過ぎないのです。
特にこの事を感じたのは、私が銀行の税務部門に在籍していた当時、

「オプション付き定期預金」の販売に際して、課税関係を課税当局に相談し、

課税の方向性が決まった時でした。


この商品をご存じの方もおられると思いますが、この商品は

・預金者がオプション契約を結び、

・銀行から金利リスクや為替リスクを引き受ける代わりに、

・高額のオプションプレミアムを受領する

というもので、

オプションにより引き受けた「損失が預金元本を棄損させるリスク」の対価として、

高額のオプションプレミアムを受領できるという仕組みです。

オプションにおいては、

「プレミアムを受領したものがリスクテイクして損失を負担する」

か、

「オプションの行使が無ければプレミアムの分が儲かる」

というギャンブル性の高い金融商品です。


この、定期預金に組み込まれたオプションについて、

個人が受領したオプションプレミアムを「預金利子として源泉課税」されることが当局により決定され、

その金融商品は販売されて今日にいたっています。

 

私は、金融商品を見るたびに、本来はキャッシュフローだけであるのに、

そこに経済取引を当てはめて色づける法律、会計、

税務の常識に、“これは一体なんなんだ”と思うことがあるのです。

 

何せ、法人が引き受けたオプションプレミアムは「仮受金」で処理されますが、

個人が引き受けたオプションプレミアムは預金との複合商品となった場合には、

「預金利子」と名前を変えて源泉徴収の対象となるのですから。

 

保険も同じような側面がある

保険についても同様で、 保険商品を学んでみますと、

保険会社が預かるキャッシュインフローを「保険料」と命名し、

支払った側では、時に「保険料控除」の対象となり、法人契約では時に「損金」「預け金」として「資産計上」、また時によって「給与」扱い、などとされるのです。


そして、保険会社が保険事由が発生して支払うキャッシュアウトフローを「保険金」と命名して、課税関係も様々です。

 

まとめ

不動産や商品の譲渡対価として受けとるキャッシュや、

サービスの提供の対価として受けとるキャッシュと異なり、

金融商品“キャッシュの単なる交換取引”なので、無名性が高く、キャッシュフロー

従来の典型取引に“当てはめて名前を付さなければならない”という法律上、会計上、税務上の要請があるのです。

ですから、保険を含む金融商品の課税関係は、

いつも“これは一体全体「ナンジャラホイ」”という側面を持っているのだと思いますし、

一部の金融マンが、金融商品ごとの法律、会計、税務の適用の首尾一貫性の無さにあきれているのだと想像しています。

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