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国際税務Vol.15 中国に出向者を派遣する前に ~PE問題でつまずかないために~

中国に出向者を派遣する前に   

~PE問題でつまずかないために~

国際税務Vol.15

 

 

こんにちは。

 

国際税務を担当していると、

PE(Permanent Establishment)の問題に直面

することがあります。

特に中国との租税条約は独特な内容のため、

他の国では見られないような苦境に陥ることもあります。

 

さて今週は中国のPE問題がテーマのSUレターです。

 

PEとは

近くて遠い国中国。

日本人のビジネス感覚とは異なる場合もいろいろとあり、

中国と取引を行う場合は細心の注意が必要です。

 

近年PE(Permanent Establishment - 恒久的施設)認定の手法を使うことにより、

中国の課税権を拡大する事例が多くあります。

PEとは、事業を行うために設けた一定の施設もしくはそれに準じるものをいいます。

具体的には、支店、事務所、工場等です

中国の非居住者企業が稼得する所得については中国国内にPEがあり、

かつその所得がPEに帰属するものである場合に、

中国はその所得に対する課税権を持つことになります。

 

中国のPE問題で厄介なのは、

PEの範囲に「コンサルティング役務の提供」が含まれることです。

 

日本企業が中国に人員を派遣し、

技術支援サービス等のコンサルティング役務の提供を行う場合、

その期間が12ヶ月のうち6ヶ月を超える場合には、

中国におけるPEと認定されるのです。

(この6ヶ月というのは一単位のプロジェクトだけを基準とするほか、

複数の関連プロジェクトを全体として認識される場合もあるので注意が必要です。)

 

日本企業は単に出向として送り出したつもりでも、

中国側でPEと認定されると個人所得税の他に企業所得税

営業税といった本来出向とは無関係のはずの税金まで課税されることになります。

 

対策としては?

ではこのようなPE認定を避けるためにはどのような対策を講じたらいいでしょうか。

国税務当局が発行した通達によると「PEを構成しない場合」として、

①子会社の要請による子会社のための人員派遣であること

②その出向者が子会社に雇用されていること

③子会社がその出向者の業務に対して指揮権を有すること

④その出向者の業務への責任及びリスクが子会社により負担されていること

といった要素を挙げています

 

逆に言うと、出向元親会社が出国者に対し指揮権を有し、

関連するリスク及び責任を負担し、

その給与を負担している場合にはPEとして認定される可能性が高くなります。

 

したがって、中国に出向者を派遣する際は事前に入念な出向契約書を作成して

当局からの追及に対応できるようにしておく必要があります。

 

PE問題以外にも…

PE問題だけに限らず、中国には様々な通達が存在し、

その解釈も曖昧で現場の担当官の裁量によるものも多いため、

時には不当な課税を強いられるケースも存在します。

中国においてビジネスを行う場合には専門家を交えての入念な準備が必須となります。f:id:supt:20171005114015j:plain