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国際税務Vol.12 移転価格同時文書化スタート! ~国税が訪問してくるかも?~

移転価格同時文書化スタート!

国税が訪問してくるかも?~

国際税務Vol.12

 

こんにちは。

 

日本の税務署は7月に人事異動があり、

一段落した秋以降に税務調査シーズンが始まります。

前回の調査から時間が経っているお客様がそわそわし始めるのと同時に

我々も兜の緒を締める昨今です。

 

移転価格の同時文書化制度がついに始まり、

対象となる企業は対応に追われているのではないかと思います。

国税当局は納税者のとまどいに呼応するかのようにガイドブックを発行しました。

 

さて今週は移転価格同時文書化がテーマのSUレターです。

 

BEPSプロジェクト

グローバルな展開をする企業が増え、

国際的な租税回避問題などが多くの関心を集めていますが、

各国の税制や国際課税ルールが企業のグローバルな活動に追いついていない状態でした。

そこでOECD租税委員会が

「税源浸食と利益移転(BEPS:Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクト」

を立ち上げ、国際課税ルール全体の見直しを行ってきました。

国税庁もこれに参加し、各国の税務当局と議論を重ねてきました。

 

移転価格の文書化については、各国においてそれぞれの制度が異なるために、

多国籍企業グループにおいてコンプライアンス・コストが上昇しているのではないか

といった問題もあり、それを調整すべく議論が進められたようです。

 

国税庁の動向・移転価格ガイドブック

そのような背景のもと、国税庁は新たに移転価格のガイドブック

2017年6月に公表しました。

これには移転価格税制に関する納税者の予測可能性や

行政の透明性を高めることにより、

企業の自発的な税務コンプライアンスの維持・向上を図る目的がこめられています。

 

このガイドブックを一読してみると、

国税当局が納税者に積極的にアプローチしようとしている姿勢が感じられます。

 

国税庁の取り組み 相談窓口の設置

例えば、2017年4月から移転価格税制上の適切さを

企業が自ら検証するとの観点等から同時文書化が義務化されましたが、

同時文書化対象取引(前事業年度に一の国外関連者との間で行った

国外関連取引の合計額が50 億円以上又は無形資産取引の合計額が3億円以上)

に関する個別照会への回答や相談に積極的に対応し、

企業が来訪する相談窓口を各国税局に設置することになりました。

 

国税庁の取り組み 訪問・指導・助言

また、同時文書化義務の対象となる企業を訪問し、

ローカルファイルの作成状況を確認しつつ、必要に応じて指導、

助言等を行うことにもなりました。

 

訪問されるとなると身構えてしまいますが、これは税務調査ではなく

訪問の際ローカルファイルを提出しなくても罰則や不利益があることはなく

これを元に追徴課税されるようなこともないため心配は無用なようです。

何も準備していない状態で突然調査にこられるよりは、

事前に指導してもらえるほうが安心かもしれませんね。

 

ローカルファイルサンプルも

今まで文書化、文書化、と言われても具体的にどのような文書を作成すればいいのか

よくわからない部分もあったのですが、

このガイドブックにおいてはローカルファイルのサンプルも掲載されています。

これを見ればなんとなくイメージがわくのではないかと思います。

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