その他Vol.2 スイッチOTC薬控除はじまります~1万2千円からの医療費控除~
スイッチOTC薬控除はじまります
その他Vol.2
~1万2千円からの医療費控除~
こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の木下です。
厚生労働省から2015年度の概算医療費が公表されましたが、
なんと41.5兆円(一人当たり32.7万円)と13年連続で増加しているようです。
今後も医療費が膨らんでいくようで、将来の医療費の負担が心配です。
今週はそんな医療費に係る所得税の医療費控除がテーマのSUレターです。
平成29年度から始まるスイッチOTC薬控除について、ご存じでしょうか?
年間医療費が10万円未満の方でも、医療費控除を受けられるかもしれません。
そもそも医療費控除って?
医療費控除は医療費の領収書を確定申告の際に提出することによって、
税金を安くすることができる制度です。
ただし、年間医療費が10万円を超える必要があり、
10万円を超える部分しか医療費控除が使えません。
市販薬や治療費の領収書を集めてみたが、10万円を超えずに無駄な労力となってしまった方も多いのではないでしょうか?
新設された医療費控除の特例
そういった事情もあってか、平成28年度税制改正でスイッチOTC薬控除という
医療費控除の特例ができました。
このスイッチOTC薬控除は、健康診断などを受ける人の特定の市販薬(スイッチOTC薬)の年間購入価額が1万2千円を超える場合に、その超える金額が医療費控除の対象となる制度です。
従来の医療費控除に比べ、
【健康診断などを受ける】
や
【特定のスイッチOTC薬の購入費のみが対象】
と要件がありますが、年間10万円超必要だったのが、
年間1万2千円からになりましたので、従来よりも大変お手軽に医療費控除を受けることができるのです。
特定のスイッチOTC薬とは
では、控除の対象となる特定のスイッチOTC薬とは何なのでしょうか?
スイッチOTC薬とは、元々医療用であったものが、薬局やドラッグストアなどで処方箋なしに購入できるようになった市販薬のことです。
このうち、厚生労働省が指定したスイッチOTC薬が控除の対象となり、
・鎮痛剤の「ロキソニンS」
・花粉症の「アレグラFX」
・風邪薬の「パブロンエース錠」
などなど、薬局で購入されている方も多いのではないでしょうか?
(対象となる市販薬は、厚生労働省のHPで確認することができます。)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000134361.pdf
対象商品には共通識別マークを任意表示する予定ですので、市販薬を選ぶ際には、
控除対象となる薬かどうか確認するのも良いかもしれません。
健康増進や疾病予防の取組みが必要
控除を受けるためには、
・特定健康診断(メタボ検診)
・予防接種
・定期健康診断、
・健康診査
・がん検診
のいずれかを受ける必要があります。
減税される金額は?
次に減税される金額について見ていきましょう。
例えば、対象となる市販薬の年間購入費用が6万円の場合です。
1万2千円を超える4万8千円が医療費控除額となります。
そのため、所得税の税率が20%とすると、
9,400円(4万8千円×20%)が減税となります。
住民税についても医療費控除がありますので、住民税の税率が10%ですと、
4,800円(4万8千円×10%)が減税となります。
ただし、年間購入費用の上限は10万円となりますのでご注意ください。
また、スイッチOTC薬控除を受けると、従来の医療費控除を受けることができませんので、確定申告の際には、どちらかを選択することになります。
確定申告に必要な書類
確定申告の際には、
・健康診断などを受けたことを証明する書類
・市販薬の領収書
が必要となります。
これまで、医療費が10万円を超えなかった方についても控除を受けられる可能性がありますので、市販薬を購入された際には、レシートを保管してみてはいかがでしょうか?
国際税務Vol.2 海外出向者の一時帰宅時の税務 ~海外出向者が日本に一時帰宅したときは要注意~
海外出向者の一時帰宅時の税務
国際税務Vol.2
~海外出向者が日本に一時帰宅したときは要注意~
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。
さて、今週は国際税務がテーマになります。
あるお客様から、下記のような質問がありました。
「海外の子会社にある従業員を5年ほど派遣していたが、
今後は、日本本社の従業員と会議をしていい影響を与えてほしいため、
3ヶ月ごとに2週間ほど日本本社で一時勤務することにした。
現在、この従業員の給与は、海外子会社が支給しているが、
留守宅手当と賞与は日本本社が支給している。
何か税務上問題になりますか?」
さて、どういった問題があるのでしょうか。
結論から言いますと、
従業員に支給する留守宅手当や賞与のうち、日本本社での勤務に係る部分は、
20.42%の源泉税が課せられます。
また、海外子会社が支給している給与のうち、日本本社での勤務に係る部分は、
日本で確定申告する必要があります。
ただし、租税条約が締結されている場合は、確定申告の必要はありません。
居住者・非居住者の判定
まず、この従業員が居住者か非居住者か判定をします。
税法上、居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する者とされています。
また、非居住者とは、居住者以外の者とされています。
海外赴任の場合、海外赴任期間が1年以上の予定の者は、
出国時に非居住者とされます。
そのため、この従業員は非居住者に該当します。
日本本社が支給した給与等の課税は?
非居住者は、日本の国内源泉所得についてのみ課税されます。
この国内源泉所得の定義を、所得税法161条12号イに給与について次のように規定しています。
「俸給、給料、賃金、歳費、賞与又はこれらの性質を有する給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務その他の人的役務の提供(―省略―)に基因するもの」
つまり、この従業員が、日本本社で一時勤務した期間に対応する給与等は、「国内源泉所得」となります。
そのため、日本本社が従業員に支給する留守宅手当や賞与のうち、日本本社での勤務に係る部分は、20.42%の源泉徴収をする必要があります。
海外子会社が支給した給与等の課税は?
非居住者は、国内源泉所得について日本で課税されますが、
それは、海外子会社が支給している給与についても同様です。
つまり、海外子会社が従業員に支給している給与のうち、日本本社での勤務については、「国内源泉所得」となり、確定申告をする必要があります。
短期滞在者免税について
上記のように、原則として、海外子会社が支給している給与のうち、日本本社での勤務については日本で課税問題が発生しますが、その海外子会社の所在する国が日本と租税条約を締結している場合は、課税問題が発生しない可能性があります。
それは、租税条約に規定されている、「短期滞在者免税」の制度によるものです。
「短期滞在者免税」とはよく「183日ルール」と言われるものです。
下記の3つの要件を満たす場合、短期滞在者免税として日本では課税されません。
- 滞在日数基準 滞在期間が継続する12カ月において合計183日以内であること。
- 支払地基準 従業員に支払われる給与が、日本法人から支払われていないこと。
- PE負担基準 従業員に支払われる給与が、相手国企業の本国内に保有するPE(恒久的施設)によって、負担されていないこと。
例えば、日米租税条約においては、短期滞在者免税の要件とされる我が国での滞在期間をその課税年度において開始又は終了するいずれの12か月間においても合計183日以下であることを要件としています。
従いまして、海外子会社と租税条約を締結しているか、また、短期滞在者免税条項があるかを確認する必要があります。
相続・事業承継Vol.2 国外財産調書 気になるその動向! ~出す?出さない?安心に関わるかも~
国外財産調書 気になるその動向!
相続・事業承継Vol.2
~出す?出さない?安心に関わるかも~
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の押味です。
最近、弊社でも国際税務のお仕事が目立ってきました。
国際税務と一言で言っても、法人税、所得税、相続税と多岐に渡ります。
何事でもそうですが、何となくでも知っておくと「ピン!」とくることができるかもしれません(ギクッ!かもしれません…)。
さて今週はそんな国際相続がテーマのSUレターです。
ずばり国外財産調書です。
だんだんと認知されつつも、様子見といった方も多いと見聞きします。
そこで気になるのは、いったい実際はどのように運用されるのか、罰則はどの程度か、実際バレるのか…?!といった点ですよね。
ご紹介します。
まずは制度の概要と罰則について
罰則がかなり厳しいのはご存知でしょうか?
ちなみに、詳しい方は「しばらく罰則は課せられないんじゃなかった?」と思うかもしれませんが、
H26年分からは課せられます。
不安を抱えながら過ごすよりも、早めに提出してあからさまにした方が安心できるかもしれません。
・提出しなければいけない人…年末時点で国外財産を5000万円以上保有する方
(正確には非永住者以外の居住者)
・提出期限…翌年3月15日まで(確定申告期限と同じ)
・罰則…1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられることがあります。(偽りの記載や単純に提出しなかった場合など)。他にも5%の過少申告加算税の加算があります。
(そのほかの詳細は 国税庁パンフレットをご覧ください)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hotei/kokugai_zaisan/pdf/kaigaizaisan_tirashi.pdf
国際相続は関係あるの?
今回のテーマである国際相続にどのように関係があるのか。それは、財産の状況を税務署に事前に把握されていることになる、という面です。
国外財産調書を提出すると、税務署内でシステムに登録されます。所得税の申告と併せて提出することがほとんどなので、所得税のみの制度のような気もしますが実際には、
所得税申告者の方の財産を登録する
=亡くなった場合の相続税の対象財産として既に把握されている
=相続税についても利用される!
となるでしょう。
本当に皆出しているのか?!
さて、次に実際の動向です。「提出しているのはごく一部」といったことを見聞きします。
実際、国税庁公表の資料によれば、次の通り。確かに少ないと感じます。
提出件数:約5,500千件(H25)→約8,000件(H26)
総財産額:約2.5兆円(H25)→約3.1兆円(H26)
※H27年分は未公表
どう考えれば良いか
ということで、いつかは把握されそうです。
また、税務調査があった場合には、お金の負担(ペナルティも含めて)もそうですが、心身の負担感も相当です。
実際、弊社にご依頼のある方々は、多くが「そんな不安を抱えたまま生きるのは嫌だ」「自分が相続で苦労したから、家族には苦労をかけたくない」とお思いで、
提出した後はスッキリとされています。
提出期限後に提出しても、「期限内に提出されたとみなす=ペナルティ無しでOK!」という規定もあります。
冒頭にも書きましたが、早めに提出してあからさまにして安心を得るのも一考です。
その他Vol.1 不動産を購入したときにかかる税金!~どんな税金が待ち構えている!?~
不動産を購入したときにかかる税金!
その他Vol.1
~どんな税金が待ち構えている!?~
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の新宮です。
やっとの思いでマイホームを手に入れた、会社が大きくなり自社ビルを持つようになった。という嬉しい話しとは裏腹に予期せぬ出費にビックリ!!
さて今週は不動産がテーマのSUレターです。
いざ不動産を購入したときにどのような税金が待ち構えているのでしょうか。
不動産を購入したときには、印紙税、登録免許税、不動産取得税などの税金がかかります。
印紙税とは?
日常なにげなく作成している文書の中に税金が課税されるものがあります。
文書とは、
・不動産を売買する時に作成される売買契約書
・金融機関から借入れをおこすときに作成する金銭消費貸借契約書
などです。
この契約書などに係る税金が印紙税で、作成した文書に収入印紙を貼ることにより納付します。
税額は文書の種類と契約書に記載された金額よって決まります。
・契約書に記載された金額が1万円なら200円、1億円なら6万円など、
契約書に記載された金額に応じて印紙税額が変わるもの
と
・この文書ならいくらというように金額が決まっているもの
があります。
印紙を貼らなかったら?
原則は、本来納付すべき印紙税額とその2倍に相当する額
(合計で本来の印紙税額の3倍)の税金が徴収されます。
なお、納付していなかったことに気付き自主的に納付した場合には、
本来納付すべき印紙税額とその10%に相当する額
(合計で本来の印紙税額の1.1倍)に軽減されます。
契約書のコピーにも印紙税はかかる?
かかりません。
ただし、コピーに両当事者が署名・捺印した場合には印紙を貼らなければなりません。
登録免許税とは?
不動産を取得したときには、その権利関係を明らかにするために、土地、建物の登記を行います。
この登記をするときにかかる税金が登録免許税です。
不動産の購入にかかる登録免許税(原則)
・土地(新築中古問わず)なお、土地にはH29.3.31までの軽減措置があります。
・・・固定資産税評価額×20/1000 → 15/1000 (H25.4.1-H29.3.31まで)に軽減
・建物(新築)・・・登記官が決めた価額(※)×4/1000
・建物(中古)・・・固定資産税評価額×20/1000
※新築建物の場合、なぜ法務局の登記官が決めた価額で計算されるのかといいますと、
新築については固定資産台帳に登録された価格がありません。
そこで法務局が同じ構造の家屋ですでに固定資産台帳に登録された価格のあるものを基に価額を決めることになっているためです。
居住用住宅を取得した場合の軽減税率
居住用住宅は登録免許税が軽減されます(床面積50㎡以上など一定要件あり)。
ただし、土地についての登記には軽減税率はありません。
・建物(新築)・・・4/1000 → 1.5/1000に税率が軽減
・建物(中古)・・・20/1000 → 3/1000に税率が軽減
いつ納めるのか?
登記を法務局に申請する際に、登記申請書に税額相当分の収入印紙を貼り付けて納めます。
つまり、登記の手続上、法務局に対しては、登記が完了する前に登録免許税を納めなくてはいけないのです。
不動産取得税とは?
不動産取得税とは、不動産を取得したときに1回限り課税される税金です。
以下の基本算式となりますが、期間限定の特例や新築、中古で減額される特例がいくつかあります。
土地・建物の固定資産税評価額(課税標準)×4% = 税額 → 最終的な税額
※1 ※2 ※3
※1 宅地:課税標準を1/2とする特例あり
住宅:一定要件で控除あり(1,200万円をマイナスするなど)
※2 4%から3%に軽減あり
※3 一定の住宅地については減額措置あり
借地権の場合は?
不動産取得税の対象となる土地の取得とは、土地そのものの取得であり、借地権や地上権のような権利の設定や取得は含まれておりません。
この場合、家屋についてのみ対象となります。
納税方法は?
取得後6か月~1年半くらいの間に各都道府県から届く「納税通知書」にて納付します。
不動産の購入に税金は付き物ではありますが、
特例などをうまく使って損をしないようにしたいものですね。
なお、建物の購入には消費税が上乗せさることもお忘れなく!
国際税務Vol.1 海外出張・派遣時の税務 ~海外派遣には税務も注意してください~
海外出張・派遣時の税務
国際税務Vol.1
~海外派遣には税務も注意してください~
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。
さて、今週は国際税務がテーマになります。
あるお客様から、下記のような質問がありました。
海外の子会社に2人従業員を派遣するのですが、税務上注意したほうがいい項目は何でしょうか。
Aさんは、数か月で日本に戻ってきますが、Bさんは2年以上行く予定です。
さて、どういった問題があるのでしょうか。
結論から言いますと、
Aさんは居住者に該当しますので、出国前と同様、
全世界所得(国内源泉所得+国外源泉所得)に課税されます。
出国時に必要な手続きはありません。
Bさんは非居住者に該当しますので、出国後は日本の国内源泉所得のみについて課税されます。
また、出国時に税法上の非居住者に該当しますので、
出国時までに年末調整をする必要があります。
居住者・非居住者とは
従業員の海外赴任に際しては、税法上、居住者・非居住者の区分が大変重要になります。
その理由は、派遣される従業員が居住者か非居住者かによって、
日本で課税される所得の範囲や課税方法が異なるからです。
税法上、
・居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する者
とされています。また、
・非居住者とは、居住者以外の者
とされています。
海外赴任の場合、海外赴任期間が1年以上の予定の者は、出国時に非居住者とされます。
逆に海外赴任期間が1年未満の予定の者は、居住者とされます。
また、当初の海外赴任期間が1年未満だった者も、
赴任中に1年を超えることが判明した場合は、その時点から非居住者となります。
課税所得の範囲は?
居住者は、全世界所得(国内源泉所得+国外源泉所得)について課税されますので、
出国前も出国後も日本の税金についての取扱いは変わりません。
非居住者は、日本の国内源泉所得についてのみ課税されますので、
出国後から取扱いが変わります。
出国時の年末調整
海外赴任期間が1年以上の場合、出国時に税法上の非居住者に該当しますので、
非居住者になった以後は、国内源泉所得がなければ日本の税金は課されません。
そのため、出国前に日本で給与収入を得ていた場合には、
出国時に日本の税金を精算する必要があります。
この精算の手続きは毎年12月に行われる年末調整と同様です。
出国時の年末調整の手続き
上記の通り、基本的には通常の年末調整と同様の手続きになりますが、
所得控除の範囲が、出国時の現況により判断することになりますので、
下記の手続きが必要となります。
① 給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者控除申告書を提出します。
・・・保険料については出国時までに支払った金額を記入します。
また、配偶者控除の範囲は出国時の現況によります。
② 年初に提出した給与所得者の扶養控除等申告書に異動がないか確認します。
・・・扶養控除の範囲は出国時の現況によります。
相続・事業承継Vol.1 相続税だけでなく所得税も?~出国税(相続人に非居住者がいる場合は要注意!)~
相続税だけでなく所得税も?
相続・事業承継Vol.1
~出国税(相続人に非居住者がいる場合は要注意!)~
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の乾です。
なんと最近弊社に米国の大学を卒業した人が入社しました!
もちろん英語はペラペラです。うらやましい限りです。語学に技術を身に付ければ仕事の幅が広がりますね
さて今週は国際相続がテーマのSUレターです。
ご存知の方も多いと思いますが、昨年(平成27年)の7月に国外転出時課税という制度が出来ました。いわゆる出国税といわれるものです。
出国税とは
どのような人が対象になるのかというと、国外転出時に有価証券等(匿名組合契約の出資持分も含まれます)を1億円以上保有し、かつ、国外転出をする日前10年以内に日本に居住していた期間が5年超である人です(以下「対象者」といいます)。
対象者が日本から転出される際に、保有している有価証券の未実現利益に所得税を課税するという制度です。
日本はひどい制度を作る国だと思うかもしれませんが、実は多くの先進国(米国、仏国、英国など)が既に導入しています。
相続税・贈与税に関連する?
出国税という名称から日本から国外へ移住する方の所得税のみが対象との印象を受けますが、この制度は相続や贈与の時にも関わってきます。
対象者が亡くなった時に、相続人の中に既に海外に居住している非居住者がいた場合などです。
有価証券等を非居住者が相続することになれば、その後非居住者が売却した際の売却益に日本の所得税を課税できなくなるため国外転出時課税の対象とされているのです。
このようなケースは結構あり得るのではないでしょうか。
例えば、
被相続人の方が非上場の会社の経営者でかなり成功し、株価は1億円を超えていた。しかし事業承継を行う前に突然お亡くなりになった。
その時息子はアメリカで働いていた、なんてことや会社を上場させ含み益が多額にあり、
いつか相続対策をしようと考えていたが、そのままお亡くなりになってしまった。
その相続人のうち1人が海外にいる、なんてこともありえます。
問題点は?
もめずに日本の居住者が取得すれば問題はないですが、もめるのが普通です。
遺産分割協議は相続税の申告期限までに、というのが今までの一般的な認識でした。
しかし、亡くなった方が出国税の対象者であり、かつ、相続人に非居住者がいる場合には、相続税の申告よりも前、被相続人の準確定申告までに遺産分割の意思決定をせざるを得ないケースが出てくることになりそうです。
相続発生後4か月以内に被相続人の準確定申告を行わなければなりません。
そこまでに分割協議が行われていなければ、有価証券等は共有財産であるため法定相続分で有価証券等を取得したとみなして、非居住者についてはその有価証券の相続分が出国税の対象となり譲渡所得税を納付しなければなりません。
もちろん被相続人の資金は凍結されています。自己資金から納付するか納税猶予(担保を提供する必要あり)手続きをするか迫られます。
その後分割協議で非居住者の取得分が増えれば、確定した時点から4か月以内に修正申告を行い、減れば更正の請求ができるようになりました(平成28年度改正)。
遺族の気持ちも無視して、4か月以内に意思決定をせまるのはあまりにもひどく、せめて相続税と同じ10か月の猶予を与えるべきではないでしょうか?